星雲星団観望〜準備

下調べとチャレンジ
事前におもしろそうな天体をピックアップしておく事は重要だと思います。天気が悪い時に色々と思いをめぐらしながら調べ物をするのもおつなものです。方法としては、ガイドブックで調べる、写真集などで調べる、星図で調べる、天文ソフトで調べるなどがあります。
日本のガイドブックにも優れたものがありますが、紹介されている天体の数が少なく本格的に観望しはじめるとすぐにねた切れとなってしまいます。海外のガイドブックにはものすごい数の天体を収録したものあります。こうなると逆に対象を絞りこんでやる必要があるほどです。海外の書籍を眺めていますと(英語が読めないので眺めるだけ・・・)、見えるものはなんでも見てやろうとする天体にたいする限りない情熱が感じられます。作者は英語が大変苦手でありますが、天体解説で使われる英単語はかなりパターン化していますし、掲載さているスケッチを眺めるだけでも参考になりますの、十分利用価値があります。
星図では銀河が特に密集している所や重なって描かれている所があります。こういう所は要チェックです。また、散開星団が集まっている所や大きく広がった散光星雲も目に付きます。天の川の中に浮かんでいる系外銀河や、銀河の密集部に紛れ込んだ球状星団、春の空でほとんど唯一の散光星雲なども是非見てみたいものです。星図に見たい天体をチェックして行きましょう。ついでにどんな感じみえそうなのか、コメントを付けておくと観望の際に大変役立ちます。
天文ソフトの中でもRealSkyは絶対お勧めです。パロマなどの天文台で撮影された全天の画像データがCD-ROMに収納されたもので、ほとんどの対象を確認できます。自分の見た結果とRealSkyの画像を突き合わせてみると、どのあたりまでが自分の器材で見える対象か、感覚がつかめてきます。
見たい対象をピックアップするだけでなく、特徴もピックアップしておくようにしましょう。渦巻き銀河のかすかな渦状腕の広がりや、惑星状星雲の濃淡、微光銀河の群れなど、目的意識を持って観察しないと、みすごしてしまう可能性があります。そして、このようなかすかな特徴を見つけ出すのが星雲星団観望の醍醐味でもあります。

ガイドブックの必要性
写真とは違って、眼視で見える天体の特徴は、ほんとにかすかなものです。何がどのように見えるか知っていないとなかなか正確な形をつかむのは難しいでしょう。大昔のスケッチを見ると、写真に慣れ親しんでいる我々からすれば大分違和感を感じる姿が描かれています。でも、彼らのほうが先入観を持たず、すなおにスケッチしていると思います。みんなであー見える、こー見える、こんなのが見えた・・・といった中で天文ファンの共通認識が発展していけば理想的だと思います。その辺をあまりオープンにせず、自分なりに見つけていく楽しみを残しておくべきではないか、とする考えかたもたしかにあると思います。星表やスカイサーベイ写真から面白そうなのをピックアップして、自分の望遠鏡でもこんなのが見えた!!って”発見”した時は最高に楽しいものです。しかし、所詮は個人的な発見。過去に観測されたものの再認識にすぎないわけですから、人の見ていないものを見てやろうなどとは肩肘張らずに、自分の器材でここまで見えた、こんな見えかたをしたといったスタンスがよろしいのではないでしょうか。
写真だって他人の撮ったのを見て、自分もこんなのをとってみたい・・という所からまずスタートすると思います。眼視も同じだと思うのですが、こんなのが見えました・・っていう報告が国内ではとっても少ないように感じます。そういう報告がどんどん出てくれば、写真と同じように多くの人が切磋琢磨して全体のレベルが向上するのではと思います。また、へー、そんなのが見えるんだって、新たに興味を抱く人が増えて、眼視人口も増えれば、市場が活性化し、安く高性能なのが手に入るようにならないかなって期待しています。

食い入るように見ること
星雲星団のかすかな構造を見出すのは容易なことではありません。良く知られたテクニックとしては対象を直視せずにそらし目で見るというものがあります。これは非常に効果的です。さらに良く見たい時は長時間じっくりと食い入るように見ましょう。当たり前のようですが、1分2分と覗き続けてやると今まで見えなかったものがかすかに見え始めたりします。こうすることにより、人間の目が持つ識別能力を極限まで発揮できる印象です。この効果はかなり大きく、解説記事にのっている特徴が見えなかった場合はぜひこの方法を試してみて下さい。このようにして見える限界天体はちょっと視線をずらすと見失うこともあるほどです。星図に目を移したりすると、最小限の赤色光を使っていても、再び捉えるためにはまたしばらく目を慣らす必要があります。また、一見、かすかな恒星状に見えているものが実は系外銀河だったりすることもよくあります。”もしかしたら恒星ではないかも”などと、記録した天体を後でチェックすると、微小銀河か微光重星であることが多いようです。また、暗さよりもコントラストが問題になる場合もよくあります。フェイスオン銀河の渦巻き構造や惑星状星雲の内部構造などです。このような場合にも基本は食い入るように集中して見ることですが、高級なアイピースを使ったり、望遠鏡自体に迷光処理などを施して器材のグレードアップを図るのも手です。かすかで、確信の持てない微妙な特徴はラフスケッチなどで記録を残して後日、RealSkyやMegaStarで確認すると良いでしょう。そして、次回の観望にフィードバックするのです。下調べ、観望、後チェックと、一つの天体で何度も楽しむことができますし、こうして新たな”発見”を確認できた時はほんとに嬉しいものです。

倍率
作者の使用している32cmでは主に110〜150倍を多用しています。次に70〜190倍、時に50倍、ごくまれに300倍、といった所です。
昔、68mmを使っていた時は星雲星団はできるだけ低倍率でと教えられ、実際その通りで20〜40倍の範囲でしか使っていませんでした(当時は長焦点アイピースを持っていなかったせいもあります)。ちょっと倍率を上げると対象が淡くなって見えなくなります。不思議なもので、瞳径を計算してみると今日多用している領域と良く一致しています。理屈から選択したのではなく、自然とそのあたりを多用するようになった経過から判断してなんらかのスイートスポットが存在するのではないかと推測してしているのですが・・・。倍率を下げると面積体の表面輝度は上がりますが、背景も同時に明るくなってしまい、淡く広がった散光星雲の観察にはあまり適していないように思えます。ナローバンドフィルターを併用すると良いらしいです。広い実視野を得る為には広角・長焦点しかありませんし、巨大天体の観望や、天の川の川下りはぜひ試してみたい所であります。
散光星雲の観望には70倍くらいが好みです。散開星団は視野の中で適度な大きさにとどめておく必要がありますので、対象のサイズに合わせてアイピースを選択しています。大きな散開星団ではコントラストはあまり気になりませんので、48倍を使う事が多いです。
110倍は目標確認用や、点在する系外銀河を同一視野で楽しむ、大き目の対象の詳細確認などで、最も多用しています。
150倍は中型銀河の詳細確認などに良く使います。
190倍は小さな銀河の確認や、惑星状星雲の観察に必要です。110倍では存在の分からないような小さく淡い対象がこのくらいの倍率では確認できることもあります。木星を見るときもこのくらいで見ることが多いです。
200倍以上になると、なかなかシャープな像が得られなくなりますし、追尾も困難になります。重星の観望、惑星状星雲の詳細を見ることがあります。一度、300倍にOVフィルターを付けてM8の中心部を見るという荒業を試みたことがあります。結果はM8のスケッチを参照して下さい。

記録を残そう

星雲星団観望を趣味として続けていくためには、自分の観望結果を記録することが大切です。日記形式の簡単なものでも良いですし、対象のインプレションを文字や図で残すのも良いでしょう。記録を残すと自分の到達点を確認でき、興味の持続、新たな目標設定などが出来ます。また、マイナーな対象が多くなってくると、観望場所に詳しい資料を持っていけませんので、とりあえず見えたものを記録しておいて、自宅に帰ってからゆっくり確認するという方法もあります。たまには自分のたどった足跡を振り返ってみるのも面白いものです。

スケッチについて
スケッチすることの意義として、最も大切なのが、対象を良く観察することだと思います。絵として記録するためには、形状、中心の明るさ、周辺の明るさ、模様の形など、一度、自分の頭の中で”言葉”へ処理して手を動かす必要があります。このように頭の中で認識作業が行われると記憶にも残りやすくなります。正確に描くためには視野とスケッチ用紙を交互に見る必要があるわけですが、こうしているとそれまで気づかなかったものを見つけ出すこともよくあります。具体的方法に決まりはありませんので、自由な発想でとりくまれて良いと思います。