手動導入のやり方
望遠鏡を手に入れて星雲星団を見ようとした時にだれもがまずつまずくのが導入、つまり、対象を望遠鏡の視野に入れることです。
ここでは、全くの自己流ですが、作者がいつも使っている方法を解説します。この方法に慣れてしまうと、星図に載っている天体なら簡単に導入できるようになり、次々と観望が楽しめます。多くの人がこれに近い方法を編み出しているようです。最近は自動導入という便利なものもありますが、やはり自分の手で導入するすのは楽しいものです(バッテリーの心配もありませんし)。

準備するもの
1.星図
8等星くらいまで記載されたものが良いでしょう。一枚に、ある程度広い範囲が表示されているとページを選択するときに便利です。作者はスカイアトラス2000をA4、2枚に縮小コピーしてクリアファイルに入れて愛用しています(夜露対策のため)。
2.ファインダ
正立式と倒立式があります。正立式の方が高価ですが、肉眼と対比しやすく便利ではなかと思います。倒立式でも慣れれば特に不便はないようです。十字線は必ず必要です。
3.赤色ライト
野外で星図を見るために必ず必要です。小型のマグライトか赤色LEDで十分です。
4.スケール感をつかむ
まず、ファインダの視野が何度と表示されているか確認してください。普通7度くらいと思いますが、これが星図上でどのくらいのサイズになるのか確認しておきましょう。星図には赤緯の数値が表示されていますので、これを参考に7度の円を星図上に指で描いて見ましょう。そしてファインダの視野を思い浮かべて下さい。こうして、ファインダの視野が星図のどのくらいの範囲に相当するのか感覚をつかんでおきます
5.望遠鏡の限界と対象の明るさを知る
当たり前のことのようですが、望遠鏡で見えないものは正しく導入できても見えません。自分の望遠鏡で見える対象を選択することは重要なことです。そのためには自分の望遠鏡と観測場所での限界をつかむようにしましょう。作者の環境では対象の大きさにもよりますが、12等以下の系外銀河は確実で、13等あたりが限界のように思えます。

ファインダ合わせ
望遠鏡をセッテングするときに、ファインダを合わせます。手動導入には必ず必要な作業です。1等星で合わせても良いのですが、動いて行きますのですばやく合わせる必要があります。北極星を使うとこの点、便利ですが、少し暗いのでの間違って別の星に合わせないようにしてください(失敗の経験あり)。十字線の交点に出来るだけ正確に合わせるようにしましょう。手動導入の精度は半分以上、ここできまります。

導入
ここではM51を例にとって解説します。
1.まず星図をひらいて目的の天体を確認します。次ぎに近くの特徴ある星座や恒星を探します。ここでは北斗七星がちょうど良い目印になりそうです。さらに、場所を絞り込んでいきます。M51では北斗七星の柄の先端にあたる星(星図にはη星と表示されています)が目印になります。
2.次ぎに星空を見上げて、星図と対比しながら、目印となるη星をさがします。このとき星図は実際の星空と同じ位置関係になるよう、傾けたり、ひっくり返したりしましょう。このことはファインダを使う段階で特に重要になります。頭の中で星図を回転させるより、すなおに星図を回転させた方が効率的です。下図に星図と夜空を比較したようすを再現してみました。





図2(肉眼でみたようす)の中でη星は見つかりましたか?
3.ここからいよいよファインダを使います。まず、η星を導入しましょう。
最初にファインダに導入する星は肉眼ではっきりと見えている星を選ぶのがこつです。
肉眼とファインダを交互に覗きながら導入します。
4.次ぎに導入した星が本当にη星であるか確認します。星図を良く見てη星の周辺の星の配列を確認しましょう。このようにファインダの視野と星図を見比べるとき、星図上でのスケール感覚が物を言います。下図に星図の拡大図と、ファインダで覗いた視野の図を示します。



星図をよく見ると、η星から左上へ向かってやや明るい恒星が二つ並んでいるのが分かります。ファインダでこれが見えているか確認します。図4でファインダで見た視野を示しています。図3の星図が対比できましたか?これで下のほうにある恒星がη星であることが確認できました。ファインダの視野で見る恒星は星図ほど明るさの違いが目立たないことに注意してください(こんなのが再現出来るのがステラナビゲータのすごい所です)。星図とファインダーに見えている視野を対応させるのが、一番重要かつ、難しい所だと思います。
4.導入の最終段階です。星図上で、M51のそばにある特徴的な星の並びを探しましょう。ここでは、C,D,Eとマークをつけた三角形がよさそうです。この三角形をファインダの視野の中で探しましょう。視野の中央、やや右上にありますね。M51はもうすぐそばです。
5.最後にM51をピンポイントで特定します。見つけた三角形のC−Dを底辺として、M51を頂点とする三角形を思い浮かべましょう。ややいびつな三角形ですが、この形を記憶して、頂点の位置にファインダの十字線を合わせます。図5参照。これでどのくらいの精度かというと、CとDの角度は47分ですので、±20分は堅いでしょう。中倍率のアイピースでも導入できる精度です。

6.いよいよ接眼部を覗きます。どうですか。ちゃんと視野に入っていますか。M51は明るいので気づかないことは無いと思いますが、暗い対象などを導入して、視野に入らなかった場合は、この状態でまずじっくり観察してみましょう。視野に入っているのに気がつかないだけ、ということが良くあります。

最後に
今回は三角形の頂点に対象の位置をがありましたが、周辺の恒星の配列によっては、二つ並んだ星の中間、とか、さまざまなバリエージョンが考えられます。なれてくれば、CDEの三角形にたよらなくてもABを一つの辺として、M51を頂点とする三角形を思い描くことで十分導入できます。しかし、作者の経験では、少しずつ絞り込んでいった方が結果的に効率的なようです
視野に入ってないからといって、やみくもに視野を動かすのは出来るだけ避けましょう(自分の位置を見失う可能性が高い)。視野を動かしてみるときはファインダで特定した位置を基準に、動かした分だけもとの位置へ戻して基準位置を確保しておくと良いと思います。でも、あくまでファインダと星図を対比させて導入するのが基本です。うまく導入できない場合には必ず理由がありますので、原因をつきとめて、対策をとるようにしましょう。ファインダがずれたとか、起点となる恒星を間違えたとか、よく経験することです。以上、文章にすると長くなってしまいましたが、何度か練習すればごく短時間で導入でるようになります。ぜひ一つでも多くの星雲星団を巡ってみてください。